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エクソンモービルはESSOやMobileのガソリンスタンドでお馴染みの世界最大級のエネルギー会社です。
石油・ガス事業については探鉱、開発、精製(上流)から、製造、輸送、販売(下流)までひとまとめに手掛ける垂直統合型の企業です。
エクソンモービルの確認埋蔵量は民営の中では第一位です。
エクソンモービルは、セブンシスターズと言われるかつて絶大な価格決定力を持っていた7つの石油会社のうちの2つ(エッソとモービル)が1999年に合併した事により出来た民営石油会社です。
1960年のOPEC設立に伴い、石油産出国が権益の国有化を進めた事で価格決定権は中東諸国に移る事になります。
持つ者と持たざる者では圧倒的に持つ者の方が有利に立てますよね。
基本情報
エクソンモービル(XOM)はNYSE上場しており、従業員数は約7万人とかなりの大企業です。
S&P格付はAA+であり、エネルギーセクターでは時価総額第一位となっています。
企業理念と戦略
エクソンモービルのAnnual Reportには基本戦略が提示されています。その中をかいつまんでお話しします。
革新的技術による成功
エクソンモービルの成功の裏には135年以上に渡って数多くの地道な研究があります。現在では約2万人を要する研究者が175以上の大学と研究を行い、1ドルの投資で5ドル以上の価値を生み出しているそうです。
優位性のあるポートフォリオによる株主価値の向上
簡単に言うと、上流工程では油田の開発を行い、下流工程では付加価値の高い商品を開発する事で売上を伸ばしていこうと言う事です。
油田開発の安定性は、確認埋蔵量を確認する事で判断出来ます、
エクソンモービルの確認埋蔵量は2015,16年を除き数十年の間100%を超えています。
(確認埋蔵量が100%を超えているほど安定していると言えます。)
また下流工程においては、円安の影響もありますがROCE(使用資本利益率)が25%近くあります。
ビジネスの統合で価値を最大限創造する
"The whole is more than the sum of its parts"
これは有名な諺としてエクソンモービルのIRに登場しています。
日本語にすると難しいですが、サッカーに例えるとスーパースターの寄せ集めよりも日頃から一緒になって練習したチームの方が勝ると言う様な感じです。
エクソンモービルは上流から下流、化学製品までのバリューチェーンを構築する事で価値を最大限に伸ばす事を目標としています。
事実ここ10年の投下した資本に対する利益率は他の石油メジャーよりも飛び抜けて高くなっています。
ビジネスモデル
ビジネスモデルは、上流(Upstream)と下流(Downstream)及、化学(Chemical)に分かれています。
上流では世界38カ国にオイル・ガス活性地域の権益を保有しています。
下流では、世界25カ国に精製設備が存在しています。
化学製品の販売も16カ国で行っています。
この3つが垂直統合型で石油事業を担っています。この3つの事業にどのようにリスクを分散させているのでしょうか。
セグメント別売上比率
エクソンモービルの主な収益は上流で約60%近くあります。ロイヤルダッチシェルの上流比率が12%だった事を考えると、一重に石油メジャーと言っても経営戦略は大きく異なりますね。
一般的に上流側は原油高の恩恵を受けるので、最近の原油安の影響は大きくなっています。
一方で、化学品にも力を入れている事が分かります。下流側、化学製品は原油安で儲かりやすくなるため、堅実にリスクを分散させているとも言えます。
一方、今後のカギになってくる、再生エネルギーやLNG、シェールガスといった分野への投資はまだまだと言えるでしょう。
今後も石油事業が途絶える事はないと思いますが、人口増加に伴う環境への配慮は一層重要度を増してきます。
その様な意味で今後の各社の対策は必見です。
地域別売上比率
北米とイギリスで約半分の売上を挙げています。北欧地域も売上上位に入っています。
シンガポールの比率が大きいのは、化学品をアジアに展開するために資本投下したためと思われます。
エクソンモービルの財務諸表分析
続いて三大財務諸表の分析をしていきましょう。
PL(損益計算書):原油安の影響による停滞
ここ最近売上高は下落傾向にあります。原油安による影響でしょう。それでも何とか利益は出せています。
2016年には営業利益率、純利益率共に5%を切っていますが翌年には8%程度にまで戻しています。
元々、設備投資の大きいエネルギー業界なので全体的な利益率は低い傾向にあります。
実際、売上原価は概ね80%前後になっています。
一時的な不調はどの企業にでもありますが、この不調が原油価格の動向によるものか、内部問題なのかは見極める必要があります。
少なからず原油価格に大きく左右される事は間違いないでしょうが。
BL(バランスシート):牢固な財務体質
エネルギー業界特有の大きな有形固定資産比率が見て取れます。現金はほとんど持ち合わせていませんね。
流動比率を見ると100%を切っており、潤沢なFCFがあるとはいえ少し不安な部分ではあります。
負債に目を移すと、長期負債の割合が低く、株主資本が50%を超えています。
CF(キャッシュフロー):堅実な投資対応
〜2016年にかけて営業CFの減少に伴い、投資CFも抑制させています。その後2017年の回復に伴い投資額を挙げています。
この様に、自分の懐具合を上手く見極めて事業を行っていけるのもエクソンモービルの強みであると言えます。
配当:35年以上連続増配中
原油安の影響による利益の落込みで、増配率は高くないものの、堅実に増配年数を増やしていっています。
2016年には一時的に配当性向が100%を超えましたが、概ね50%前後に留まっているところを見ると、まだまだ余地はあると思います。
自己資本比率は約50%程度であり、レバレッジをあまり大きくする事無く、堅実な事業をしているといえます。
まとめ:堅実で長期投資向きの投資対象
エクソンモービルのIRを見ていると、大胆な投資で成長率を上げていこうとする姿勢は見られません。
どちらかといえば、リスクを出来る限り減らして株主への還元も考えようと言う意思が見て取れます。
代替エネルギーやシェールガスの台頭により、石油業界は厳しいと言われて久しいですが、リスクの取り方でまた違った方向へ進むかもしれません。
少なくとも、短期的(5~10年程度)に淘汰される企業ではなく、今後も継続していく力はあり、ボックス相場なので長期で保有するには良い銘柄なんじゃないかなと思います。