dartmaniaです。
突然ですが、プロスペクト理論と言う言葉を聞いた事はあるでしょうか。
これは、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授らによって提唱された理論です。
簡単に説明すると、安きを買い高きを売る事が基本である投資において、投資家が損大利小という真逆の行動を取ってしまう事があるのです。
今回は自分の無意識の行動を理解する事により、投資判断への思慮を深める事が目的です。
それでは、より噛み砕いて見ていきましょう。
プロスペクト理論とは
この理論は
不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。(Wikipedia参照)
と難しい事が書いてあります。
つまり人がお金絡みで選択を迫られた時に、どのような選択をするか実験したのです。
あなたはどちらを選びますか?
これから2つの問題を出します。まずはどちらを選択するか直感で選んでみましょう。
問題1:「次のAとBのどちらを選択するか」
A:くじを引くだけで100万円が確実に手に入る
B:50%の確率で150万円が手に入るくじ。外れた場合は0万円
この問い掛けに対して大多数の人はAを選択します。
つまり、利益が出ると分かった時点でリスク回避を優先させます。
それでは、次の問題にいってみましょう。
問題2:「あなたの総負債が150万円あるとして、次のAとBのどちらを選択するか」
A:くじを引くだけで100万円が確実に手に入る
B:コインを投げて表ならで150万円が手に入る。裏なら0万円。
この場合、多くの人は、Bを選択します。
まとめると、
1. 利益が出ている場面では安全にリスク回避を行う
2. 損失がある場合は損失を回避する様に動く
これを一般的にプロスペクト理論と呼んでいます。
答えによっては損をしている!?
先程の結果を考察してみましょう。
まず第一に、問題1と2でほぼ全く同じ質問をしているにも関わらず、心理状態によって異なる選択をする可能性があります。
問題1の場合は、せっかく利益が出ているのだから賢く貰いたいという心理状態が働きます。
問題2では、200万円の借金を返したい。どうせ100万円貰っても借金はなくならないのだから、賭けにでて200万円貰えればチャラに出来る!!!と意気込むわけです。
これは非常に興味深い結果です。投資においては、同じ商品や銘柄であれば誰が取引をしても同じ様に動きます。しかしその人の心理状態で選択は2つに分かれます。
だから利益が出る人と、損をして最悪退場を余儀なくされる人がいるのです。
投資ブログや投資雑誌のオススメ銘柄を見る、つまり他人の真似をしようと思っても、考え方やバックグラウンドが違うので同じ様な成績は残せないんですよね。
それでは、論理的な数学の観点から先程の問題の答えの内、どちらが有利なのかを見ていきましょう。
理屈で選ぶならどちらが合理的か
あくまで確率論(期待値)の話にはなりますが、これも面白いです。
問題1、2共にAの期待値は100万円です。
一方、Bの期待値も同様に問題1、2共に75万円となります。
つまりどちらの状況においてもAを選択する方が論理的には正しい選択となります。
しかし実際にBを選択する人もいるでしょう。
投資の世界でマグレで勝ち続ける事は不可能です。つまり知らず知らずの内にBばかりを選択していると、最終的には退場する可能性がA選択した時よりも増える事を示唆しています。
あくまで確率論で、確実な判断ではないですが、如何に心理状態の違いが歪んだ視点をもたらすかが理解頂けたと思います。
評価損益で変化する心理学
それでは、次は株式投資に置き換えて考えてみましょう。投資リスクは常にどの場面でも存在しています。
その中で意思決定をするわけですので、知らず知らずの内に誤った判断をしてしまう事があるのもまた事実です。
次に投資判断時にどのような心理状態になるか見ていきたいと思います。
売却検討時の心理
売却検討時のリスクは、売却後の値上がりと保有継続による下落リスクです。
正直、投資は確率論で考えられる程甘くはありません。しかしある一定の利益が出ていると売却したくなる心理が働きます。
プロスペクト理論で言うと、保有し続けてる事による値下がりリスクを嫌う傾向にあると言えます。つまり売却をする確率が高くなるわけです。
この判断は賢明であるとも言えますが、上昇リスクが伴います。
買付検討時の心理
買付時は、少しでも安く買いたいと思うでしょう。
買付検討時のリスクは、買付前の値上がりと買付後の値下がりです。
この場合、問題Bであった様な損失を回避する方向に動こうとします。つまり、買付は保留にしようと判断しがちであると言う事です。
下落局面時は顕著に現れますよね。しかし実際はそういう時に投資をしている人が後々資産を伸ばしているのではないでしょうか。
結果として買わずに値上がりしてしまった経験は誰しもあると思います。
プラスに転じた時の心理
続いて保有銘柄がプラ転した時について考えてみましょう。
僕のライザップ売却時の場合は、プラ転時に喜びと安堵が来ました。そして損失がなくなったので売却を実行しました。
これは問題Aに当てはまり、大多数と同じ選択をしている事が分かります。
売却後、ものの見事に上昇相場を演じています。つまり上昇リスクをもろに受けた事になります。
この結果が全てではありませんが、大多数の人と同じ選択をする事で生き残れる程投資の世界は甘くない事を教えてくれているのかもしれません。
マイナスに転じた時の心理
マイナスに転じた時は、損失を回避する様な動きとなります。つまり損失を確定させずに保有し続ける選択肢を取る事が多いのです。結果としてさらに値下がりして完全塩漬け状態になっている人もいるのではないでしょうか。
僕も基本的には、塩漬けタイプなのでこれもやはりマジョリティに分類されるのでしょうか。
この結果から分かる様に、投資家は損切りラインを決めるのも一つの手かもしれません。
プロスペクト理論から投資判断を読み解こう
人間は心理的な要因で真逆に選択が変わってしまうのです。
このプロスペクト理論から投資を見ると、まるで損大利小を選択しているかの様にも思えます。損小利大が目的の投資なのにこれではまさに真逆です。
自分の心理を上手く利用しよう
この理論を上手く利用する事で、マジョリティではなくマイノリティを選択し投資の世界で有利になる事がお分かり頂けたかと思います。
しかしどの様な心理状態でも、確実な投資判断と言うのは存在しません、いつもあるのは結果のみです。
こういった心理を逆手に取り、投資判断をする事でまた違って視点でみられるのではないでしょうか。
他の判断基準を持つ事も忘れずに
どの理論もそうですが、このプロスペクト理論においても、あくまで参考の一つでしかありません。投資を確率のみで語るのは早計です。そのために、ファンダメンタルやテクニカルなんてのも存在します。
僕は判断基準として、ファンダメンタルを基にして行っています。
まとめ
プロスペクト理論を知っている事で、必ずその通りにすれば良いと言うわけではありません。投資は自己責任です。
しかしこの様な選択をしやすいと言う事が分かっているだけでも、見方はだいぶ異なってきます。
マジョリティと同じ様に動いていても利益は出ません。投資家にはマイノリティが求められているのです。
一見関係のなさそうな経済行動学を知る事も、繋げて考えると面白いものです。自分の行動ももしかしたらよくある行動学にあてはまっているのかもしれません。